指しゃぶり
 
2002年6月号掲載


元来私たち人は、生まれながらに哺乳本能を持ち、胎生8〜9ヶ月ごろにはその練習としてお腹の中で指しゃぶりを始めているようです、そして生後2〜3ヶ月ぐらいには盛んに自分の指を吸っている所を観察できます。ところが、幼児期後半にさしかかりますと情緒面での発達の結果、社会性が芽生え指しゃぶりに対する子ども自身の羞恥心が生じたり、周囲の人たちの注意に耳を傾けることができるようになったりし、また日中は遊びに熱中し欲求が満たされ指しゃぶりをやらなくなります。

 しかし一方人目が無い所では、無心に何かに集中しているときや、夜間就寝前などに指しゃぶりを継続している子供も認められます。このように、3歳ぐらいをすぎた時期になっても指しゃぶりを続けさせていると、奥歯は噛んでいるのに前歯がすいてしまっている「開咬」や前歯が出てきてしまうというような歯並びの不正が起こってしまうことになります。

 ただ、指しゃぶりの問題はその子供の寂しさや、欲求不満など、心の中の問題を満足させようとするための行動であることが重視されており、無理やり叱ってやめさせたり、指サックなどの指しゃぶり防止器具を使用してやめさせたりすることが、心の問題をより深めることになる可能性も否定できません。

 そのため、指しゃぶりを止めさせるには、まずその子供の心の問題を保護者が気づきそれを子供と一緒に解決することが先決です。その上で初めて、対話や指しゃぶり防止器具を利用し、子供に何らかのきっかけを与えることが出来れば指しゃぶりは自然に解消して行きます。もしすでに前記のような歯並びの不正がおこっていたとしても指しゃぶりをやめることが出来れば、ほとんどが自然に回復してゆくようです。