母と子の虫歯関係  
2001年12月号掲載


最近は歯の健康への関心が高まり、虫歯の少ない子どもが増えてきました。しかし、その中にあっても依然ほとんどの歯を虫歯にしてしまう子どもを検診で見かけることがあります。これはどうしてなのでしょう。

 まず考えられるのは虫歯関連菌の問題です。虫歯はミュータンス菌に代表される虫歯関連菌が口の中に定着し、食べた砂糖分を分解し酸を出すことにより歯を溶かして発症します。この虫歯関連菌が赤ちゃんの口中に現れるのは、乳歯の生え始める生後6か月ごろ。そう、離乳食を始めるころなのです。この菌は、お母さんが口移しで食べ物を与えたり、同じスプーンを使ったりして親の口から移っていきます。治していない虫歯を多く持つお母さんの口の中には、ミュータンス菌が多く、離乳食の時期に、沢山の菌が赤ちゃんの口に移っていき、虫歯になりやすい子どもになってしまいます。ただ、お母さんからの口移しは子育ての中で重要な意味もあり、このことを否定しているのではありません。虫歯の少ない子どもにしようとすれば、子供が生まれる前にまず親がきっちり虫歯を治し、お口の清掃を完璧に行なう習慣をつけておく必要があるのです。

 2つ目はおやつの問題です。おやつは子どもにとって、体や情緒の成長を促進し、社会性をつけるために必要なものなのですが、砂糖分をひんぱんに取ることによりミュータンス菌たちの活動を活発にし虫歯を起こします。ここでも重要なことは、おやつを食べさせないことではなく、決まった時間に与え、食べた後は口の中をきれいにする習慣を厳格に守らせることなのです。日本の3分の1しか虫歯のない国スウェーデンでは、子どもの歯を守るために1週間に1回だけ土曜日を「お菓子の日(グーデイズ)」とし、ほかの日にはお菓子を与えません。日本でも見習いたいものですね。
 そしてもうひとつ重要なことは、こう言ったことを相談し、子供さんの成長に合わせた離乳食やおやつの指導、そしてお口の清掃の指導をしてもらえるあなた自身と子供さんの「かかりつけ歯科医」を見つけることではないでしょうか。工夫してみてください。“まずよく見ること”これが歯を健康に保つ秘訣なのです。