アメリカの最新歯周病治療と栄養指導
 
2005年10月号掲載


平成11年の歯科疾患実態調査によると、日本では歯周病(歯槽膿漏症)に罹っている人は国民の83%、50歳以上に限るとなんと90%以上となっています。わが国ではまだまだ認識が低いですが、歯周病は、口腔ガン、心臓疾患、脳梗塞、骨粗鬆症、早産、糖尿病、呼吸器感染症などの病気と関連していると言われ、アメリカでは「歯周病は、全身性の病気であり、単に口の中にその症状が現れているにすぎない」とさえ考えられています。現在、歯周病の主な治療方法は、歯ブラシ指導、歯石取り、および外科手術ですが、臨床的研究により、それらの効果が不十分なケースが40%にも上っていると言われ、その結果治療先進国アメリカでさえ、45歳以上の人の80%は歯周病症状を持っているそうです。

 歯周病は歯周病関連菌による感染症です。他の病気も含め、このように人が細菌などに感染した場合、体の中には殺菌消毒の作用を持つ『活性酸素』が作られ感染症がおこらないように防いでくれている事実が最近分っています。しかしこの『活性酸素』、必要以上に作られてしまうと、逆に正常な細胞やDNA までもが攻撃され破壊されてしまいます。ただ体では、その余った『活性酸素』を無害にし、身を守るために『抗酸化物質』( 代表的なものにSOD とよばれる酵素があります。)というものも作られるのですが、その量が不足すると結局病気は進行してしまいます。歯周病の進行も突き詰めるとこのようなメカニズムだったのです。これらの研究の積み重ねの結果、2002年6月アメリカ医学界は見解を大きく転換しました。『抗酸化物質の不足は慢性疾患につながるリスクを高める。普通の食事のみでは、抗酸化物質を十分に摂取することはできない。したがって、食事以外にも抗酸化物質を摂取することが必要である。』と。そのためまだ広くは知られていませんが、アメリカでは新しい治療法として免疫栄養素(抗酸化物質を含み免疫系を強化する栄養素)を使った方法が考えられています。その結果今までの歯周病治療と共に『抗酸化物質』を利用した場合、ポケット(歯と歯ぐきの隙間の深さ、歯周病の指標のひとつ)の減少率が3倍になったという報告もあります。

 ただ、日本は、アメリカとは食事内容が違いますので、まずは抗酸化物質を含む食材を多く摂る事を心がければ良いのではないでしょうか。その例としては、緑黄色野菜、大豆、ゴマ、ナッツ類、海草、魚介類、新鮮な果物などがあり、それでも不足する場合はサプリメントの利用も視野に入れると良いようです。日本には「食養生」という言葉があり、中国には「医食同源」、西洋にも“Kitchenpharmacy” 「台所は薬局」という言葉があります。これらは皆、健康に於ける食事の大切さを示し、食事が自己の免疫力を高め、本来の自然治癒力を高めてくれると示しています。皆さんも今一度、毎日の食事を見直してみてはいかがでしょうか?もちろん、食後の歯ブラシも忘れずに。