ドライマウス
 
2005年4月号掲載


口の中が乾く、食べ物が飲み込みにくい、お茶や水が手放せない、口臭が気になる、口の中がねばつく、調整を繰り返しても義歯が痛む…といった症状はありませんか?もし、この中に思い当たるものがあれば、あなたは口腔乾燥症(ドライマウス)かもしれません。ドライマウスは、日本国内では推定800万人の患者さんがおられると言われ、唾液の質の異常や分泌量が少なくなる事によってひきおこされます。ひどくなると舌の表面が赤く凹凸のない状態となり、灼熱感や、味覚障害、咀嚼・嚥下障害、睡眠障害をひきおこします。

 唾液は1日に約1.5リットル分泌され、清浄作用、抗菌作用、消化作用、免疫作用、歯の保護や再石灰化作用、粘膜の保護修復作用等、さまざまな作用を持っています。唾液中の抗菌物質が減ると、口の中の微生物が繁殖し、虫歯や、歯周病、口臭の原因となります。例えばカンジダ菌が増殖すると、舌が痛くなる舌痛症や、口の横が切れる口角炎、粘膜の炎症、舌の形状異常、摂食障害などがおきたりします。また、高齢者の肺炎や、感染症の原因になることもあります。

 ドライマウスは、唾液腺自体の問題、老化(口や顎の筋力の低下)、ストレス、更年期障害、糖尿病・腎不全などの全身的疾患、シェー
グレン症候群などの自己免疫疾患、薬の副作用、放射線療法など、様々な複合的な原因が考えられます。また最近のよく噛まない食生活も影響しているのではないかと言われています。

 ドライマウスの治療は、この症状と長く付き合いながら乾燥状態を緩和させる対症療法が主体となります。睡眠薬、降圧剤、抗不安薬、抗うつ剤、花粉症やアレルギー症状をおさえる抗ヒスタミン薬など薬が原因である場合は、担当医と相談の上、薬の種類や量を変更することがあります。シェーグレン症候群は、40〜60歳代の女性に多く見られ、その患者の3割に慢性関節リウマチが発症します。この場合口の渇きだけでなく、同時に目の渇きや関節のこわばりなどが感じられ、内科医などでの詳しい診断が必要になります。

 唾液の分泌を活発にするにはよく咀嚼することが必要です。早く食べない、かむ回数を増やすといったことに注意し、口の中を健康で咀嚼しやすい状態に維持するということが大切です。口の周りの筋肉トレーニングや唾液腺マッサージも効果があります。唾液減少の補助として水分を頻繁にとり、利尿作用のあるニコチンや、カフェインを控えるようにします。保湿効果の高い洗口液や歯磨き剤、ジェル、スプレーなどを利用することもあります。また、先ほども述べましたように、ドライマウスは、他の重篤な全身疾患のサインになる場合がありますので、もし異常や不安が感じられる時は、まずはかかりつけの歯科医にご相談ください。