歯周病の進行と早期発見のポイント  
2004年8月号掲載


歯周病(歯槽膿漏症)は、歯を支えている歯周組織(ハグキ、歯を支える骨など)が、炎症によって侵される病気で、日本では歯を失う最大の原因となっています。歯周病は虫歯と同じように、口の中の細菌が増殖し大集団になってしまった『プラーク』(俗に言う歯垢)により発症しますが、進行しても虫歯とは異なり強烈な「痛み」がなかなか現れません。初期の歯周病では、ハグキの出血や腫れがあると言っても『不快』程度の感覚で気付かない人も多く我慢できないほどの症状は何も無いのです。これが発見を遅らせ、気付いても放置する一番の要因となります。では、歯周病はどのようにして進行し、また、どのような症状が出てくるのでしょうか。

 歯周病の最初は、その人の食生活習慣やハミガキの不備で、歯とハグキの境目付近にプラークが増殖することにより始まります。するとハグキが腫れ始め、これが歯周病の中で「歯肉炎」と呼ばれる状態です。子供を含め、若い方にもよく見かけ、発症しても毎日少しずつの変化のため自分自身では見た目には腫れていると気付きませんし、痛みも全く自覚しません。また、大集団と言ってもプラークは小さな細菌の集まりであるため肉眼で確認することもできません。歯磨きの時などに歯肉から出血することで気がつく程度です。

 その後この状態を放置すると、一部の歯肉炎では細菌が歯周組織内部に進行し、炎症を広げて行き、歯を支える骨も溶かされて行きます。これが歯周病の中で「歯周炎」と呼ばれる状態で、年齢が上がるとそのリスクは上昇します。軽度の歯周炎では、まだそんなに歯肉炎との差が無く、自覚しない程度のハグキの腫れ・ハミガキ時の出血・少しの膿が出ることが主な症状です。しかし、中等度になると、骨の破壊も進み、歯がぐらつき始めて物が噛みにくくなります。出血や排膿も多くなり、口臭が強くなり、食べ物が歯の間にはさまりやすくなり、歯が長く見えるようになったり、水がしみるといった症状も強くなってきます。そして、時々痛みを伴う急激な腫れが起こるようになるのもこの頃からです。さらに放置し重度になると、顕著なハグキの腫れも常時発生し、痛みがあり、歯がぐらぐらして物を噛むことができず、ついにはポロリと歯が抜けてしまうこともあります。

 歯周病は中等度以上に進むと、複雑な治療が必要となり、重度に進行してしまうとほとんど抜歯しか対処のしようが無くなるため、なんと言っても歯肉炎や、初期の歯周病の間に解決する必要があります。初期に気がつけば、歯周病に対する歯磨きの方法をお教えすることと、必要あればプラークの温床になる歯石の除去で治療は終了します。上に記しましたような初期の自覚症状に注意するとともに、もし何か気がつけば放置せずに早めに歯科医院を受診しましょう。またより確実に歯周病を予防するには、かかりつけの歯科医院を持ち、定期的な歯とお口の健康管理やメンテナンスを継続してゆくことが必要です。80歳で20本以上の歯を維持し快適な食生活を一生続けられるようにするには歯周病予防が大変重要なのです。

(注・現在の制度上、原則として健康保険での予防処置は認められていないため、条件により保険外の費用が必要になる場合があります。『予防管理』『メンテナンス』の実施についてはかかりつけの歯科医師にご相談ください。)