むし歯リスク 高い 低い
 
2004年6月号掲載


“ナンデダロ〜ゥ なんでだろう〜♪” 世の中には、甘いものは食べ放題、歯の手入れは、大雑把 なのに虫歯無し という人たちがいますよね。毎年のように歯医者に通って痛いのを我慢している人にとっては、「なんと不公平な!!」と思ってしまいます。

 これにはやはり、理由があるのです。歯以外の病気でみても、風邪を引きやすい人や、お腹をこわしやすい人がいるのと同様に「むし歯になりやすい人」「むし歯になりにくい人」は、事実存在しています。この「むし歯になりやすさ」のことを最近カリオロジー(むし歯学)では『むし歯リスク』(=むし歯発生危険因子)と呼んでいます。
このむし歯リスクにはどんなものがあるのでしょうか

(1) 歯そのものにリスクがある場合

◎ 親族に歯質の弱い者がいる人(遺伝的な形質)
◎ 生まれつき歯質が弱い人(個人的な形質)
◎ 歯並びの悪い人
◎ 奥歯の咬み合わせの悪い人
◎ 喰いしばりやハギシリの強い人
◎ 生えて間もない歯
◎ 歯の根が出てきてしまった人

(2) 口の中の常在菌中にむし歯関連菌の割合が多い場合

◎ 今むし歯があり、放置してある人
◎ 乳歯の虫歯の多い子供
◎ 虫歯の多い母親を持つ子供
◎ むし歯治療済みの充填物や冠が多い人

(3) だ液の分泌量が少ない場合

◎ 投薬などで、だ液量の少ない人
◎ 口で呼吸をする人 鼻が詰まりやすい人
◎ ストレスの多い人

(4) 食習慣 生活習慣 生活状態のリスク因子

◎ 砂糖などを含む甘いものをよく食べる人
◎ 間食の回数が多い人
◎ 生活が不規則な人
◎ 妊娠中の人

主だったところではこのようなことがあげることができます。
むし歯は、口の中に住む常在細菌の集まったもの(プラーク)の中のむし歯関連菌が産出する主に乳酸という酸により、歯からカルシウム分が溶け出し歯の表層がスカスカになってゆくことで始まります。この“初期むし歯”は肉眼で見ても分からない状態ですが、この状態が進行するとついには目に見える大きさにまで進行し、神経の部分を侵し、痛みを伴うむし歯になってしまいます。これだけを取り出して見れば、虫歯は細菌感染症と言えるのですが、そこへ先に書いた生活習慣や遺伝的な問題、全身疾患とその治療、年齢など数々の「むし歯リスク」がその人ごとに色々影響し、その人ごとの虫歯の進み方を決定するのです。そのため、同じようにハミガキをしていても、むし歯リスクが高いと“初期むし歯”に犯されやすくなり、再発もおこしやすくなります。

藤井寺市の行う1歳6ヶ月、2歳6ヶ月、3歳6ヶ月検診では、その「むし歯リスク」のひとつ「むし歯関連菌の作り出す乳酸の強さ」をチェックするため「カリオスタット検査」を実施していますが、その結果リスクの高い子供さんにはフォローアップ検診でおやつの食べ方など「むし歯リスク」についてお話をするようにし、希望者には1回だけ歯の質を強化するフッ素塗布を行っています。ただ、フッ素塗布の効果を期待するには、大人の歯が生え変わり安定する中学生〜高校生ぐらいまで継続して行う必要があるため、できるならばそのことをきっかけとして、かかりつけの歯医者さんと共にフッ素塗布継続も含めた予防計画を立て、子供さん達の将来の虫歯発生のリスクを下げていっていただきたいものです。

(注・現在の制度上、原則として健康保険での予防処置は認められていないため、フッ素塗布などの予防行為は、条件により保険外の費用が必要になる場合があります。実施についてはかかりつけの歯科医師にご相談ください。)