病気による歯並びの不良は矯正治療に健康保険が適用されます  
2004年4月号掲載


近年、歯列矯正治療に対する理解が深まり、多くのかたがこの治療により歯並びをきれいにできることを知っていただけるようになりました。ただ現在の制度上、矯正治療には健康保険が適用されないことも広く知られています。けれども病気による歯並びの不良と認定される以下の2つの場合には健康保険が適用されることをご存じのかたは少ないのではないでしょうか。今回はそのことについて簡単に説明させ
ていただきます。

 この矯正治療で健康保険適用が可能な条件とは

@先天的な疾患をお持ちの場合、
A成長に伴いあごの異常な成長や変形が生じ外科的手術が必要な場合です。

 1つ目の先天的疾患には、従来から唇顎口蓋裂のかたの治療が可能でしたが、平成14年4月から適用範囲は広がり、第1第2鰓弓症候群、鎖骨頭蓋異骨症、Crouzon 症候群、Treacher ・Collins 症候群、Pierre Robi n症候群、Downs症候群が追加されるようになりました。

 2つ目の成長に伴い顎の異常な成長や変形をきたした場合というのは、矯正専門医が検査を行い顎変形症という病気の診断がついた場合です。この場合は健康保険診療の対象となりますが、治療の流れが一般の矯正治療とは若干異なってきます。それは、あごの手術を行い、手術をはさんで2回に分けた矯正治療を行うというところです。

 顎変形症の診断がつき治療を希望された場合、まず矯正科では外科手術を行う準備として矯正装置を装着し、歯のガタガタや歯の傾きを改善します(術前矯正)。その後診療科に口腔外科のある病院へ入院していただき、変形した顎に対する手術を行います。退院後、最後の仕上げとして、再び矯正科でしっかりとしたかみ合わせになるように矯正治療を行います(術後矯正)。 このように手術には、入院が必要になることや全身麻酔を受けなければならないことなどのデメリットがありますが、下あごが長いなどで悩んでいるかたにとっては劇的な変化が期待できますので、病気の状態と知らずそのことを本当に悩んでいるかたにとっては最良の治療だと思われます。コンプレックスが解消されることにより新しい人生が開けるかもしれません。