入れ歯で美味しく食べるには  
2003年12月号掲載


入れ歯を作ったが、うまく噛めない。お口の中からの出し入れが難しい。噛むと痛いところがある。にもかかわらず、歯科医院で調整してもらわずに、家の中でほったらかしにしているかたはありませんか。入れ歯を作るためには普通何回かの通院が必要なのですが、このため、型を採ってから完成するまでに数週間かかります。これは、皆さんのお口の中に合った入れ歯を作るために必要な、どれ1つとっても省けない過程を含んでいる何段階にも分かれた作業をこの間に行っているためなのです。しかし、人の歯は少しずつの動きがあり、歯ぐきも痩せたり、太ったりして、日々変化しているので、この期間にお口の中が微妙に変化してしまい、どうしても完成後には皆さんのお口の中に合わせるために数回の調整が必要となります。もし、この最初の調整を行なわず、ほっておいたりすると、その後数週間後には、最初よりもっと入りにくくなったり、総入れ歯などはすぐに落ちてしまったりして、せっかく作った入れ歯が全く使えなくなることすらあります。

 また、入れ歯を作った最初は調子が良かったのに、だんだん上手く噛めなくなってきたり、がたつくようになってきたりする事はありませんか。入れ歯も使い続けると、歯の部分がすり減ったり、歯ぐきとの間にすき間ができていたり、金具がゆがんできたり、気づかず間違ったお手入れをしている事が原因でこのようなことがおこります。がたつく入れ歯を無理に使うと徐々に歯ぐきを痛めたり、入れ歯自身を破損してしまう事になります。これらを防ぐためには、定期的に歯科医院で調整をしてもらう事が必要です。

 そして、御自分自身でも、入れ歯をしっかりお手入れしてください。毎食後は、入れ歯をはずして水道水を流しっぱなしにして、歯ブラシで磨きます。この時は、決して歯磨き剤を使用しないでください。歯磨き剤の中の研磨剤で入れ歯が傷つきすり減ってしまいます。流して紛失しそうな小さな入れ歯なら下に洗面器などを置いておき、それで受けてください。入れ歯は乾燥すると歪んでしまうことがあります。お口から出して保管する時は水をはった容器に入れて蓋をしておきましょう。入れ歯は高温のお湯につけると変形してしまいます。清潔に保ちたいのならばお湯で消毒したりせず、入れ歯専用の洗浄剤に浸けると良いでしょう。あとは、入れ歯を支える御自分自身の歯のお手入れも大切です。特に部分入れ歯を支える歯は汚れやすく傷みやすいため、十分なブラッシングが必要です。それと共に柔らかいブラシを使い、歯の無いところの歯ぐきの汚れを取り、マッサージも行って下さい。

 このように、入れ歯になったといえども、美味しくいろんな物を食べ、よく噛める入れ歯を使い続けるためには、歯科医院での定期的で専門的な調整と、ご自宅での毎日のお手入れが欠かせないのです。