プラークコントロールしてますか?
 
2003年10月号掲載


このフレーズ、テレビのCMでよく聞く言い回しです。しかし、皆さんはこの『プラークコントロール』とは何をすることだとお思いでしょうか?TVの画面では、このフレーズが流れるときにハブラシで歯をゴシゴシこすっている画面がよく流れています。プラークコントロールとは、『ハミガキ』をすることなのでしょうか?

 いいえ、それは違うのです。元々プラークコントロールとは英語の表現で、Plaque control と綴ります。しかしそれはハミガキを表すTooth brushing という表現と全く違います。それもそのはずプラークコントロールは、30〜40年ほど前欧米で言われだした言葉で、「ハミガキ」という行為がお口の病気予防には、あまり効果が無いことが確認され、それに変わって根本的に病気の原因に対し働きかけるトータルな予防方法の総称だからです。『プラーク』とはバクテリアルプラーク(bacterial plaque)を略した言葉で、日本語にすると「苔のように集まった細菌集団」ということになります。最近ではバイオフィルム(生きた薄膜)とも呼ばれるこれは、だれの口の中にでも住んでいる常在細菌がその人の歯の質や唾液の質など口の中の条件と食生活など生活習慣に影響され、その人の抵抗力の限界を超えて多数集まったとき病気を起こすことになります。そして、その細菌集団を『コントロール』つまり数を少なく調節することによりお口の病気を発生させなくしようということだったのです。

 ところがこの言葉、日本に入ってきたときに目には見えない『細菌の大集団』を的確に言い表す言葉が日本語に無かったため、元々あった目に見える歯の汚れを表す『歯垢』という言葉に間違って訳されてしまい残念ながらそれが定着したため、わが国ではいまだに昔からのハミガキのイメージが拭えないのです。

 そう、本当の意味での『プラークコントロール』とはハミガキを意味するのではなく、その人のお口の病気の状態や、将来の病気のなりやすさを診断し、将来にわたるお口の健康管理計画の下、歯科専門家と協力しあってそれに対して病気の原因であるプラークの影響を少なくするために、その人独自のお口のケアー方法、食事や生活習慣の改善方法、そして予防管理してゆく方法を含めたトータルな歯科の病気予防システムのことを言うのです。

 本当のプラークコントロールは本に書いてあったり、店に売っているのではなく、あなたの歯の健康のため、あなたのかかりつけ歯医者さんとあなたとが作り上げて行くものなのです。

 (注) 現在の制度上、原則として健康保険での予防処置は認められていないため、条件により保険外の費用が必要になる場合があります。『予防』『管理』の実施についてはかかりつけの歯科医師にご相談ください。