フッ素の応用とキシリトール入りガム
 
2002年10月号掲載


現在虫歯の予防、治療は過去に比べずいぶんスマートになりました。以前に比べ病気そのものの研究が進み対策がずいぶん分かるようになったので、タイミングを逃さなければ、虫歯を予防し歯を削ることを避けられると言い切れる時代になりました。ここで、現在分かっている虫歯という病気の正確な知識を理解していただくため大切なことを次に示します。

1.細菌性の疾患である
 虫歯の発生にはプラーク(俗に言う歯垢、口の中の常在細菌の集団のこと)の中に住むS.ミュータンス菌と呼ばれる細菌が原因しています。つまり、この細菌が存在しなければ虫歯は絶対に起こりません。この菌は酸を産生し、歯を溶かします。とにかく、菌数を減らすことで虫歯にならなくてすみます。

2.食品の糖分が関係している
 S.ミュータンス菌は、糖分をエネルギー源としているため、食事やおやつの中に糖分が多いほどその数が増え、その結果多くの酸が産生され虫歯がおこりやすくなります。

3.食事回数が関係している
 S.ミュータンス菌は、一旦食べ物が口に入ると、大変すばやく酸を作り出します。しかし、反面それが回復するには時間がかかるようです。食事やおやつの回数が多いと、たとえ少量でも糖分との接触により歯の周囲は酸性に傾きそのまま回復せず、その結果歯は溶かされ続けます。ですから、甘いものを避け、それをお口に入れる回数を少なくすることでミュータンス菌が増えることを防ぎます。

4.発生率は唾液の流量によって変わる
 それでは、酸性状態を回復させるには何か手があるのでしょうか。それは、唾液の量を多く出すことで、酸が中和され回復する効果を利用することです。なるべく硬い食べ物を食べよく噛むことにより、また食事の後にキシリトール入りガムを噛むことで虫歯の発生率を1/3ぐらいに下げることができるという報告もされています。キシリトールの甘みではS.ミュータンス菌が酸を作ることができず、ガムを噛むことで唾液の流量が増え、これにより虫歯の病変が治ったり、小さくなる効果が認められています。

5.フッ素を使うことで抑えることができる
 フッ素を使うことで歯の質は酸に溶けにくくなります。なにもしない歯に比べフッ素を積極的に利用した歯は、10倍溶けにくくなるとも言われています。ですからフッ素入りの歯磨剤を毎日使うことは大変な武器になります。

 ここで確認したいことは、これらの方法はもう痛み出してしまった虫歯に対しては手遅れであるということと、ハミガキをしなくて良いと言っているのでは無いということです。これらの応用は毎日の確実なお口の清掃と、定期的な歯科医院でのチェックの元で行うことによりすばらしい効果を出すことが前提とされています。