マウスガードの普及に努めいています。
 
2006年2月号掲載


皆様は、「マウスガード」というものをご存知ですか?マウスは“口”、ガードは“守る”。つまりお口を守るゴムの入れ歯のようなものです。そう、ボクシングの選手が試合で口に入れているあれです。スポーツを行なっているときに、お口に強い力が加わると、歯にヒビが入ったり、折れたり、抜けたりします。また、唇や歯茎は、切れて出血し、顎の骨が折れることさえあります。さらに力が頭まで及ぶと、脳しんとうを起こします。マウスガードは外から加わる力のエネルギーをその材質自体で吸収し、残った力は拡散してケガを防ぐものなのです。

 現在マウスガード使用を義務付けているスポーツには、ボクシング、キックボクシング、アメリカンフットボール、ラグビーなどがありますが、実際には他の選手と体がぶつかり合う可能性のあるその他のコンタクトスポーツでも、バスケットボールでは、相手の選手の肘で口を打ったり、サッカーではヘディングで前歯を相手とぶつけたり、野球ではボールやバットが当たったりしてお口のケガがおこります。日本体育・学校保健センターの報告によると、学校でのケガで障害給付率の最も高いのは「歯の障害」です。そこで学校歯科保険では、マウスガードの普及推進について、次のように3段階に分けて啓発が必要としています。第1段階は小学生で、マウスガードと言うものを知ること。第2段階は中学生で、マウスガードを使用することができること。第3段階は高校生で、自ら進んでマウスガードを使用すること。しかし、中学生を対象としたある調査では、クラブ活動中に口のケガをした生徒は、25%でした。そして、マウスガードを知っている生徒は35%ですが、使用経験のある生徒は皆無でした。さらに、中学校、高等学校の養護教諭を対象とした調査では、マウスガードを知っている先生は約85%ですが、使用経験のある先生は457人中わずか2人だけでした。また、養護教諭の養成課程でマウスガードの講義を受けた先生もわずか3人というのが現状で、まだまだ普及には程遠いようです。一方アメリカでは、高等学校を中心にスクールマウスガードプログラムと言う名称のもと、学校でのスポーツによる歯の喪失を防ぐ試みがいくつかの州で行なわれています。

 せっかく虫歯や歯周病が予防できたのにケガで歯を失うことは悲しいことです。ましてや、骨折や後遺症が残っては、スポーツの意味がありません。お子様のお口を守るマウスガードを皆様に知っていただきたいと言うことと、その普及に御理解、御協力をお願いしたいと思います。また、もし詳しいことをお聞きになりたい場合は、かかりつけの歯科医院へご相談下さい。