虫歯は予防できるのですか  
2001年2月号掲載


答えはイエスです。でも簡単ではありません。こんなことを聞いたことはありませんか、『毎日、歯を磨いているのに虫歯ができる。』『そんなにたくさん甘いものを食べていないのに、虫歯ができる』『わが家系は歯相が悪い』『隣の家の子供は歯も磨かなくて、いつも汚れた歯なのに虫歯が1本もない。』なぜこんなことが起こるのでしょう。それは虫歯はいろいろな要素が複雑に絡み合って発生するのであって、決して一つの理由だけでは起こらないからです。

 歯を磨くと言っても朝昼晩・歯ばかり磨くことも時間的に無理ですし、歯を磨くために生まれてきたわけでもないのですから。また完璧に磨くといっても歯並びが悪くて歯が重なっている場合などは簡単に磨けるものではありません。甘いものにしても、しょ糖の摂取量は日本は欧米に比べて数分の1とずっと少ないですが、欧米より虫歯は多いのです。でも、たとえ砂糖の量が少なくとも炭水化物は口の中で唾液によって糖になるので、スナック菓子、米、パンでも原因にはなるのです。

 虫歯と家系なんて関係あるのでしょうか。関係はあります。父母に虫歯が多いときは、子供の虫歯が多いのは統計で表れています。食べるものは同じですし、虫歯の原因になる細菌も超低年齢で母親から子供に感染しています。

 歯を磨かなくても虫歯にならないなんてあるのでしょうか。他の条件がよければ、たとえば唾液の量が多い。唾液の緩衝能(酸性を中和する力)が高い、歯質、歯並び、食べ物の趣好など条件がよければあります。ただし人数でいえば、かなり少ないことは想像ができます。

 では一般的な人が虫歯の予防をするにはどうすればいいのでしょうか?一言でいえば『可能なことは総合的にある程度する』抽象的な表現になりますが、たとえば歯磨きも、朝食後、就寝前はある程度する。磨きにくいところはデンタルフロス、歯間ブラシも使う。甘いものも食べるが、だらだら食べや肥満、成人病に結びつくような食べ方はしない。キシリトールのような虫歯抑制の甘味料も使う。フッ素の洗口、塗布もする。唾液量が少ないときは、食中食後の水分補給を考える。ある程度という表現はあいまいですが、ダイエットと同じように極端なことをすれば決して長つづきはしないと思います。